江戸べっ甲
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江戸べっ甲は、徳川家康公の駿府から江戸への移転に伴い、お抱えのべっ甲職人たちが江戸に定住したことで本格的な歴史を歩み始めました。人工の素材には決して出せない「温かみのある独特の肌触り」と、天然の斑(ふ)が描き出す「世界に二つとない有機的な意匠」が魅力です。
原材料には、熱帯の海に生息するタイマイ…
江戸べっ甲は、徳川家康公の駿府から江戸への移転に伴い、お抱えのべっ甲職人たちが江戸に定住したことで本格的な歴史を歩み始めました。人工の素材には決して出せない「温かみのある独特の肌触り」と、天然の斑(ふ)が描き出す「世界に二つとない有機的な意匠」が魅力です。
原材料には、熱帯の海に生息するタイマイというウミガメの甲羅が用いられます。特徴は、接着剤を一切使用せず、水と熱と圧力だけで甲羅同士を完全に一体化させる「水熱処」という驚異的な接合技法にあります。甲羅は厚さ数ミリ程度と非常に薄いため、職人は素材に水分を含ませ、熱した万力(プレス機)で何度も圧着を重ねることで、必要な厚みや立体感を作り出します。この工程では、温度や圧力のわずかな狂いが素材の焦げや剥離を招くため、長年の経験に裏打ちされた五感が要求されます。その後、複雑な透かし彫りや曲げ加工を施し、最後はイボタの蝋やトクサを用いて何度も磨き上げることで、べっ甲特有の内側から湧き立つような艶やかな光沢を引き出します。
職人の緻密な手技によって黄金色と黒が複雑に溶け合うその佇まいは、現代の装いにも洗練された品格を添えてくれます。
